2016年環境経営講演会 ダイジェスト

企業競争に打ち勝つ新たなValue Chainマネジメントの実現
― 中小企業の資源・経営効率の向上による利益拡大 ―

2016年2月19日(金)、東京都新宿区・四谷区民ホールにて、第10回目となるエコステージ協会主催の環境経営講演会が開催された。「企業競争に打ち勝つ新たなValue Chainマネジメントの実現」をテーマに、第一部ではCSV経営やマテリアルフローコスト会計に関する講演が行われ、第二部ではエコステージ導入による優秀事例、エコステージの最新動向が紹介された。多くの来場者が熱心に聞き入り、講演後には質疑応答も活発に行われた。

<Ⅰ.開会挨拶>
エコステージ協会 理事長
古賀 剛志

エコステージ協会は、環境問題を軸に中小企業の現場の力を上げていく仕組みづくりに注力し、コンサルタントのスキル強化を図っていることなど、現在の活動内容を紹介。今回の講演会では、経営強化のみならず、企業が社会に認められるマネジメントシステムを構築する上で参考になる講演や優秀事例を数多く揃えたと語り、開会を宣言した。

古賀 剛志
<Ⅱ.来賓挨拶>
経済産業省 中小企業庁 経営支援部 小規模企業振興課長
苗村 公嗣

中小企業をサポートする政府の立場から、中小企業・小規模事業者を取り巻く厳しい状況や、その対策として多くの支援策を行ってきた経緯について紹介した。平成26年の小規模企業振興基本法制定で「事業の持続的発展」が基本原則として位置づけられ、「単に補助金によって支援するのでなく、申請の際に経営計画の作成を促し、経営戦略に踏み込んだ支援を実施するなど、伴走型支援に発想が切り替わっている」と語り、経営強化の視点をより重視するようになったことを説明した。

苗村 公嗣氏
<Ⅲ.来賓挨拶>
富士ゼロックス株式会社 元社長/国連グローバル・コンパクト ボードメンバー
有馬 利男

2015年に採択された国連のSDGs(持続可能な開発目標)、COP21(気候変動枠組条約第21回締結会議)パリ条約に触れ、世界規模で社会・環境問題への対応が合意されたと指摘。日本国内でも、企業経営の評価軸としてESG(環境・社会・企業統治)が重視され、「企業は、こうした新しい社会のニーズに対応してソリューションを掘り起こし、企業価値を創造しなければならない」と語った。

有馬 利男氏
<Ⅳ.基調講演>
「エコステージ新規格とCSV経営~ISO改正を踏まえた新規格活用法~」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 部長/エコステージ協会 全国理事/評価基準委員長
矢野 昌彦

企業の利益と社会の利益を同時に満たすCSV(Creating Shared Value)の観点から、エコステージの新規格について紹介。今回の規格改訂によって、経営革新を目指したい企業は、従来のエコステージ認証から CSV/CSR認証に移行しやすくなったと説明。「今までのように環境視点でスタートするのでなく、経営者視点でスタートし、その中でISO14001の体系図を理解しながら環境問題も解決していく」と新規格の意図を解説し、経営パフォーマンスをより向上できると語った。

矢野 昌彦
<Ⅴ.特別講演>
「マテリアルフローコスト会計を通じたサプライチェーンの管理」
神戸大学大学院 経営学研究科長・経営学部長・教授
國部 克彦

環境管理の手法として注目されるMFCA(マテリアルフローコスト会計)の効果について、専門家の視点から解説した。MFCAでは単に廃棄物を処理する費用だけでなく、廃棄物を生産するための費用(原材料費、加工費、エネルギー費など)も明確化でき、省資源や生産率向上につながると説明。さらに、「サプライチェーン全体に導入することで、1社ではできない廃棄ロスの改善もでき、大幅に効果が高まる」と指摘し、バリューチェーン志向の国際的動向と合致していると強調した。

國部 克彦氏
<Ⅵ.優秀事例に学ぶ>
「職場環境活動(5S)から始まる企業体質改善」
高尾工業株式会社 代表取締役社長 高尾 宜史

トラクター、フォークリフト、建設機械などの精密加工を行う高尾工業の取り組みを、代表取締役社長の高尾氏が発表した。5S活動からスタートし、そこで培ったノウハウや仕組みを応用し、本来業務の改善につなげていったプロセスを紹介。従業員の技能向上や人材育成を果たせたことから「トップダウンからボトムアップによる活動に移行することで、企業体質が強化できた」と語った。

高尾 宜史氏

「めっき業における環境・品質・安全衛生・リスクに対応する
                                        マネジメントシステムの構築」
株式会社三ツ矢 米沢工場 工場長 松坂 純一

ミシンから宇宙観測機器まで、幅広い製品のめっき加工を行う三ツ矢の取り組みについて、工場長の松坂氏が発表した。環境保全活動だけでなく、品質改善活動、安全衛生活動にも積極的に取り組み、2015年には労働安全衛生の模範になるとして山形県労働局長から奨励賞を受賞。「エコステージ活動でさらなるスパイラルを回し、リスクマネジメントシステムの向上を目指したい」と語った。

松坂 純一氏

「エコステージの認証取得による環境経営の強化
         "全員参加でムリ・ムラ・ムダの削減推進"」
株式会社ウェルテクノ 総務部部長 山岸 正代

高度な溶接技術でプレス成型からアルミ部品の製造まで行うウェルテクノの取り組みを、総務部部長で女性リーダーの山岸氏が発表。若手社員の育成が課題だった同社では、エコステージ導入を機に従業員の意識改革に着手。社内新聞、YouTube動画配信など従業員のアイデアを具体化することで、「他人まかせの意識が払拭され、若い人が希望を持って働ける会社になった」と語った。

山岸 正代氏
<Ⅶ.閉会挨拶>
エコステージ協会 全国理事/全国事務局長
坂本 純章

エコステージ認証の状況、エコステージ新規格への移行、2015年版『評価及び手引き』『エコステージ規格』の発行や昨年完成したDVDについて紹介するとともに、エコステージ協会が社会貢献活動として取り組んでいる植林プロジェクトについても報告した。社会貢献活動と並行し、今後も企業の経営をサポートしていくことを改めて宣言し、講演会を締めくくった。

坂本 純章
 
<当日会場内の模様>
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「2016年環境経営講演会」アンケート集計結果より

-来場者にご記入頂いた多数の回答の中から、いくつかご紹介します。(原文のまま)-
Q:基調講演(矢野昌彦講演)に関して
  • 非常に分かりやすい説明であり、2015年規格が経営改善に役立つと感じた。
  • SWOT分析は以前研修にて勉強させていただく機会がありましたが、今回の講演をお聞きして今後実践していければと思いました。
  • CSV経営の重要性を勉強できた。
Q:特別講演(國部克彦講演)に関して
  • 共感できた。改善の視点が変わった。
  • マテリアルフローコストの考え方を取り入れた考えをしていきたい。
  • サプライチェーンを含めての活動を考えてみたいと思います。
Q:優秀事例に学ぶ①(高尾宜史講演)に関して
  • 環境経営の取り組み実践が全方位に渡って、その成果が得られている。
  • 参考になった。「見せる工場作り」「技能委員会の設立」。
  • 5Sを中心とした工場改革、成功例でした。参考になりました。
Q:優秀事例に学ぶ②(松坂純一講演)に関して
  • コンプレッサの排熱利用は特に素晴らしいと思います。
  • 同じエコステージ2認証企業の発表にて興味を持って聞くことができた。電力の削減、重油削減と課題が共有していたので参考になった。
  • 震災を経験された記録が印象的でした。BCPの重要性を再認識しました。
Q:優秀事例に学ぶ③(山岸正代講演)に関して
  • 意識改革を行い、改善活動で全員参加が図られ、大きな成果をあげている。大変良くまとまっていた。
  • 従業員の意識改革が成果を上げるポイントと考えるが、色々な方法を使いその効果が良く伝わってきた。管理責任者の熱意が感じられた。
  • 悪い企業体質がエコステージを通じて改善されたこと、素晴らしいと感じました。
ご意見・ご要望・ご質問
  • 弊社はBCPへの取り組みが遅れているので、早急に確立させたい。
  • 優秀事例の3社の取り組みが、弊社と重なる部分が多くあり、大変参考になった。ISO改定によるエコステージへの影響が分かり、今後の取り組みへの指針としたい。
  • 事例は工場を持っている会社だけでしたので、その他の会社の事例も見てみたいです。

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